ホンモノのエンジニアになりたい

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SIerの研修制度について考える

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 IT業界の中堅SIerに10年ほど勤めています。今回のエントリではSIerの研修制度について考えをまとめてみたいと思います。新人研修や就活生に向けた内容もあるので、IT業界の実態を知りたい方は是非お付き合いください。

もくじ

 

SIerの社員は研修をどう思っているか?

 まず前提。私は某それなりに大きいグループ企業の中のIT子会社に勤めています。毎年研修を受講することはほぼ義務化されており、研修受講日数を人事部門に管理されています。受講日数が少ないと、業務調整のできない奴というマイナス査定が入ります。また上司も部下に業務調整させられない奴という、これまたマイナス査定が入る。そんな外から見るとちゃんとした会社に勤めています。

 

 勿体つけても意味が無いので、私が研修にどう感じているか書きます。

  • 日常業務から離れられる休息日
  • 新たな分野へのきっかけ

 という位置づけのものだと思っています。

 

研修受けたら出来るようになるんじゃないの?

 よく就活をしている学生が研修に大きな期待をしていますが、別に研修を受けたからといって仕事がデキるようになるということはほぼありません。なぜなら研修は様々な仕事をしている人たちを集めて行うものであり、この様々な仕事というのは本当に多岐に渡っています。SI会社にいる人ならわかると思いますが、同じようなプロジェクトは殆どありません。

 そのため、講義内容は一般化された内容、教科書的な内容が多くなってしまい、「自分の担当プロジェクトには活かせない」というものになります。教科書的な内容、つまり基本を知るという点では意味があります。応用から入ってしまうと、より高次なものへの更なる応用や、類似のものへ応用する時に基本の原理原則を理解していないが故にうまくいかないことがあります。本質的な理解が足りていない状態ですね。

 応用的な話になってしまいましたが、このような理由で研修が直接その時の仕事に活きるということはあまりありません。

 

研修の効果

 では研修は効果がないのか。というと必ずしもそうではありません。実務で使う技術の基礎部分を作る事と、興味ない分野の研修を受けることで食わず嫌いをなくすという効果があります。

 基礎部分を作るというのは技術者として知らなくてはいけない部分の習得ですね。例えば顧客先に常駐してサーバの管理業務をやることになったとします。既に出来ているシステムの保守になるので、ネットワーク設定はすべて完了しています。管理業務の中でIPアドレスの一覧を見ることはあっても別にアドレスについて深く知っている必要はありません。しかしネットワークの研修を受けることで、基礎知識を固め、より多くのことを理解できるようになります。また基礎を知っているとトラブル発生に強くなれます。

 もう一つが食わず嫌いをなくすことですね。様々な研修を受けると業務には絶対関係ないし、興味もない技術分野の研修を受けなければならない時があります。我々エンジニアが何かを学ぶことを決める時には、使う技術か興味のある技術という枠の中に収まってしまう傾向があります。絶対自分では選ばない講座を受けさせられることで、「この技術って実は流行りのあの技術に繋がる基礎を為してたのか」とか単純に「おもろー!」と思うことが極々稀にですがあります。

 

 じゃあ研修って素晴らしいものなのですね。

 そうじゃないんだなー。前項では良い面を書きましたが、残念ながら殆どの講座が使えない、面白くない内容なんですね。これは会社に依るところが大きいので一般化した内容としてはお伝えできませんが、私が勤めている会社が用意している研修メニューは95%ロクでもない講座です。

 

 新人や若年層にとっては食わず嫌いからの実は面白かったがあるんですが、年齢、キャリアを重ねてくると大体の分野で自分にとって意義のあることなのか判断ができるようになってきます。そうすると、特に興味をひく講座も無いという状況になり、受講日数を稼ぐ事を目的に、研修を受けるという何とも無意味なことをしなければいけないのです。受講日数が管理されるようになって最初の頃は「マジ無意味!ワシ憤慨!」とプンプンしてましたが、もう最近は息抜きと思えるようになってきましたね。

 

新人研修

 就活生や(時期的にまだですが)新入社員の方は新人研修も気になるのではないでしょうか。私が勤めている会社では約3ヶ月半を使って新人研修をやっています。おそらく中堅以上のSIerはどこも同程度の研修を行っていると思います。

 このエントリでは研修に対してあまりポジティブな内容を書いていないことから既に推測しているかもしれませんが、新人研修もまた受けたからといって仕事ができるようになるわけではありません。また受講して学習した内容の8割くらいは業務で使いません。

 私が思う新人研修の意義は2つです。

 1つは最低限エンジニアとしての言葉を理解できるようにすることです。データベースって何ですか?IPアドレスって何ですか?と現場で聞かれ、そのレベルから後輩指導をしていくことは骨が折れます。折れすぎます。最低限必要な言葉を一度は学んだということが重要です。「覚えてないけど研修でやったな。なんだっけ?」から自分で研修資料を見直す、または自分で調べることにつなげられますので。一度も学んでいないことを一から新人が学習するのは時間がかかりすぎますから、集合研修で時間をかけてやることに意義があると思います。

 2つ目は同期の輪を作ることです。同世代の人間が3ヶ月程度、同じ部屋で学習して、協力して演習を行っていると自然と仲良くなります。そうすると配属後も会社の中にすごく小さいけど自分の居場所や遠慮せずに話せる仲間ができるんですね。そういう輪というのは若いうちは同じ会社の友達・仲間としての付き合いが出来るし、10年20年経つと所属部門を超えたつながりとして仕事にプラスの影響を出せます。「全然違う部門だけど、あいつ同期だからちょっと聞いてみるね」という会社的に望ましいつながりが出来上がるというわけです。

  

 ぶっちゃけこの程度です。真剣に学ぶことは必要ですが、同期と楽しくやる方が後々大きいリターンがあると思いますので、楽しくやればいいと私は思っています。

 

※私が勤めている会社では新人研修の間に会社は新人の評価を行っています。会社は後の部署配属に向けたデータを集めていますので、テストでは高得点を取る、率先して前に出る、問題行動を起こさないという当たり前のいい子ちゃんを演じた方が得です。このあたりはまとめるとおもしろそうなので今度まとめてみます。

 

就活生に知ってもらいたいこと

 日本国内においてSIerは新卒未経験でそれなりの人数を採用していることはご存じのことだと思います。そして未経験だからこそ、皆さんはよくこういうことを言います。

「御社を志望する理由は充実した研修制度があり(中略)私はIT技術のことはよくわかっていないので(以下略)」

 これ他社との差別化を図ろうとした結果なんだと思いますが、充実した研修制度があっても、大事なのはその利用率と満足度なんですよ。制度はあっても使えなきゃ意味がないし、内容がしょぼくても意味がないんです。そして結果として、「これだ!」と思う研修メニューが無くて行くのがだるくなる。

 結局現場にある設計資料やプログラムを読む、実機に触れるというのが、最強のレベルアップ方法なんです。志望動機として”充実した研修制度”を挙げるなら、これらを理解した上で言ったほうがいいでしょう。ようは「御社は本当に研修制度がすごいです!ヨイショ!」とする使い方ですね。

 研修に行けば仕事で使う知識を教えてくれる、という形で頼っていると入社してから、聞いてたのと違う、となります。とは言っても別に恐れる必要はありません。先輩たちはそんな状況でもいつの間にか仕事できるようになっているんですから、自分たちも大丈夫に決まっていると強く思い込めれば何とかなります。

 

最後に

 今回は書こうと思った内容からだいぶ逸れてしまいました。 元々は従来型の研修なんてエンジニアにとって本当に必要なものではないという展開をしようと思っていたのですが、途中からむしろこの内容は就職活動をやっている人に届いてほしいと思うようになり、妙なメッセージを放ってしまいました。

 このテーマは掘り下げながら思考を整理すると思いのほか面白かったので、また書こうと思います。それではさいなら。

 

おわり。