ホンモノのエンジニアになりたい

ITやビジネス、テクノロジーの話を中心とした雑記ブログです。

【読書感想文】「Yコンビネーター シリコンバレー最強の~」を読んで


読書感想文です。今回読んだ本はこちら。

 

Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール

Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール

 

本文中でYCと記載しているところはYコンビネータ―の頭文字をとった略称です。

 

この本を読もうと思った理由

ハードカバーの本は嵩張るのであまり好きじゃないんですが、Yコンビネータ―というスタートアップスクールの話は何かで聞いたことがあって、面白そうだと思った記憶があったので読んでみました。

あと作者が外国人で、翻訳された本というのも選んだ理由の一つです。海外で出版された本で、クソみたいな本は翻訳されないですからね。たまに内容がクソで商業的に成功しただけの本もありますが、Amazonの評価も高かったのでまぁ大丈夫でしょと読んでみました。

 

全体の感想

書評家みたいなことは書きたくないですが、本書は劇薬です。取扱い注意です。

ITの力を信じていて、でも普段の仕事ではそれを実感できなくて、世界のテック企業と自分のいる場所に隔たりを感じ諦めてしまっている方は、本書を読むと熱気にほだされる可能性があるため注意してください。文章を通して強い熱気を感じ取れる良書ですが、熱すぎて火傷の危険性があります。

 

繰り返します。良書です。私は今まで何冊もIT系やビジネス系の書籍を読んで来ましたがトップクラスです。

タイトルにある「Yコンビネータ―」はシリコンバレーにあるスタートアップ養成スクールです。ここでは熱意と能力とアイディアを持つ起業を目指した人間を集めてきて、投資をしつつ3ヶ月かけてスタートアップ企業として鍛え上げていくスタイルで運営されています。ドロップボックスやヘロク、エアビーアンドビーがここの出身です。あと有名どころの話としてハッカーニュースもYコンビネーターが運営しています。(https://news.ycombinator.com/

 

本書はそのスタートアップ企業を鍛える3か月間のドキュメンタリーになります。本書は最初の起業アイディアがうまくいかず参加者が悪戦苦闘している様子や、それに対するYコンビネータ―運営側からのアドバイスで構成されていますが、いずれも生々しいというか生きた言葉で綴られていてすごく惹きこまれます。パートナー(運営側のアドバイスする人)の方たちのシンプルでいて本質的なアドバイスは文章というフィルター越しに見てもとても熱いものを感じます。

 

本書内で「ポール・グレアムと話をするとみんな早くコーディングしたくなる」と書いてあるところがありました。話をしながら元のアイディアを磨いていくと、そこで話した内容を早く実現したいと思ってコードを書きたくなるという意味なんですが、私は本書を読んでいるだけで『何か作りたい』と思うようになるほどでした。

これは人の思考に影響を与えるほどの大きなエネルギーを持ったYコンビネータ―のパートナーがすげぇという事ももちろんありますが、そのエネルギーを文章越しでも感じられるように書いた著者も素晴らしいですし、更にそれを翻訳した人(Tech Crunchの翻訳チーム)も良い仕事をしています。

 

Amazonのレビューを見ると投資の世界の人たちが多く読んでいる本のようですが、これは何かを為したいと思っているエンジニアこそ読むべき本です。すごくエネルギーが湧いてきます。またスタートアップをやりたいと思っている人や実際にやっている人には本当に身になることがいっぱい書いてある本ですので、オススメできます。

 

次項に本書を読んで心に響いてきたところを引用しながら書いていきますが、「ここだけは!」という二点だけここに書きます。

YCの教義

コードを書いて顧客と話せ、早く出してやり直せ、数字で測れる週間目標を決めて集中しろ。

スタートアップ企業の大切なところとして「YCの教義」と紹介されていた言葉です。これはスタートアップだけではなく、日々の仕事や生活の中でパフォーマンスをあげなければならないあらゆる時に重要なことだと思います。基本的なやるべきことをやって、ユーザとコミュニケーションをとって、それを早く出して繰り返しやり直せと。そして計測可能な目標を定めて集中してやる。何だろう書いてあることはよく言われることなんですが、たぶん本書の読後にまだ熱気が残っていてそれにあてられてるのかもしれません。

 

もう一つ。

創業者があきらめない限りスタートアップは失敗しない

これも良い言葉。上に書いた教義と合わせて、諦めずにコードを書き続けてユーザと対話し続けろ、ってことですね。スタートアップの成功率というのは極めて低いです。そういう上手くいかないことが大半という性質を持つものは、うまくいくまでやり続けることが重要。ギブアップするまで失敗ではないというメッセージです。

 

私は本書はすごく良い本だと感じましたが、なにをもって良い本だと思ったのか考えてみました。

1つは上にも書いた文章越しに伝わってくる熱気、エネルギーです。ドキュメントだからか、参加企業の苦悶やYCパートナーのアドバイスが生々しく感じられます。この本を読んでいると本当にコーディングをしたくなる。目標が見えなくなって無気力になった時のカンフル剤としてずっと手元に置いておきたいと思える本です。

もう1つは、スタートアップの考え方を学べたことです。上で書いたYCの教義なんかもそうです。この教義だけを見ると割とどこかで言われているような内容なんですが、これがドキュメント形式の本書を通して見ると見え方が変わってくるんです。うまく表現できませんが、読めばわかるとしか書きようのない説得力があります。

あとは本書を読む前の私の考え方に近い部分があって、読んでいて心地よかったというのもあります。ひょっとするとこれが全てなのかもしれません。特にYCがハッカーを好むという点です。新しいものを作る時に、その人たちがその技術に精通していない、ようは自分たちでモノを作れないというのはダメという話です。本書を通してYC参加者はハッカーであることが望ましいと繰り返し書かれていて、この点は本当に読んでいて心地よかった。

 

良い本である理由をうまく挙げられていませんが、まぁ良い本ってのはだいたいそうなんですよ。良い事がいっぱい書いてあってダイジェストにまとめられないんです。よほど斬新で正しい内容が簡潔に書いてあれば、「AはBである。と書いてあった。目からウロコである」と感想を書けますが、良い本は「AはBだし、CはDだし、・・・・」と永遠と素晴らしい内容が続いて、しかも一冊の中でそれが複雑に絡み合いながら説得力を増していくので、どうにもまとめられないわけです。

本書の感想から少し逸れてしまいましたが、それでもこの素晴らしい本の内容は紹介したい。次項に「これキタ!」という箇所を引用して紹介します。部分的に抜き出すと、それだけではどうにも薄っぺらく見えてしまうところはありますが、私は書評家のような本を評価する言葉を持っていないのでこうするしかない。

 

「これキタァ!」と思ったところ

「これキタ!」ポイントを引用しながら紹介します。

 

スタートアップの本質は新しい会社だという点には無い。非常に急速に成長する新しいビジネスでなければいけない。スケールできるビジネスでなければいけないんだ。そうでなければ、それはスモールビジネスの開業であってスタートアップの企業ではない。

うまく言葉で言い表すことができなかったんですが、本書を読んで言語化できました。私が勤めるSIerで以前ソリューションサービスコンテストというものが社内で行われたんですが、その時にニッチなハードウェア技術を持っているチームが、「自分らの技術を使って社内スタートアップ企業を作りたい」と言っていて「なんか違うよなぁ」と思っていたんですが、これですね。急速に成長、スケールできるビジネスでないから、しっくり来なかったんですね。

 

スタートアップのアイディアを生み出すための3か条

1.創業者自身が使いたいサービスであること

2.創業者以外が作り上げるのが難しいサービスであること

3.巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと

これはスタートアップだけの話ではないですね。SIerに勤めていると新事業の提案というタスクが突如与えられることがありますが、これは覚えておきたい。特に3番。

 

他の連中より真剣に考え抜いた点だけが優位性になる

これもスタートアップだけの話ではない。IT戦略やシステム提案の時に思い出したい言葉です。現実には企業勤めだと考え抜くための時間が与えられないケースが殆どですが、「この部分は考えるのが大変だから、考えた分だけ自社の優位点になる」という発想は忘れたくない。

 

最初にリリースしたプロダクトが赤面するほどひどい出来でないというのなら、そのリリースは遅すぎたのだ。

巧遅拙速のバランスの話ですね。私は巧遅の方に傾倒していて、意識しないとすぐに忘れてしまう。スタートアップでは拙速側に倒れている方が優れているようですが、完全に私に向いていない世界。。。改めて拙速の意識づけができました。

 

目標設定が効果があるのは、集中力が養われるからだ。スタートアップではやるべきことは毎日無数にある。しかし毎週成長目標を決めたら、その目標を達成するのにどうしても必要な仕事はどれか、適切な時間の使い方を必死で考え抜く必要がある。

”毎週の”成長目標というのは斬新に感じた。SIerや一般企業に勤めていると半年や1年単位の目標を作ることはよくある(大抵機能しない)が、週間目標というのは発想が無かった。もちろんスタートアップの話だから手持ち資金が底をつく前に成長しないといけないということであろうけども、SIerや一般企業の個人目標の話とは次元が違う速度が求められるということか。人の成長速度とビジネスの成長速度を比較してもしょうがないかもしれないですが、シリコンバレーのスタートアップでは1週間の単位で成長度合いを測るのに対して、日本の一般企業では26週(半年)ないし52週(1年)で測ると。しかも国内企業では多くのところで儀式化されているレベルですので達成への情熱も段違いに低いわけです。こういうところから地力の差が出てくるんだろうなぁと思いました。

 

成功するスタートアップはミートアップに行かない。アドバイザーたちと話すために走り回らない、ひたすらコードを書き、顧客と話す。

すごく納得したところです。スタートアップの本質はそれまでに無かった何かを作って市場に出すことです。”作って出す”というのが最も基本的で本質的なところですから、泥臭く時間を掛けてでもやるべきことという話です。たまに「何よりも人脈と繋がりが大切マン」と知り合うことがありますが、彼らは本当に薄っぺらい。あーなったら終わり。

 

流行語や使い古されたマーケティング用語は使うべきではない。「私たちはこの市場を破壊するつもりです」といった紋切型のフレーズは、グレアムにとっては素材写真のようなものだ。「ほかのスタートアップのプレゼンにも使えるようなスライドは使うな」と彼は言う。

これスタートアップだけの話じゃないですよね。この部分を読んで思ったのは、日本のSIerの会社紹介ですよ。あれは本当に酷いものだと思います。たぶん会社名だけ変えればそのまま使えますからね。オリジナリティーなんか欠片も無いくせに、面接では「なぜウチの会社なのかね?他社と比べてなぜウチ?」と聞いてきます。バカの極地です。

 

1ビットだけでもいいから世界を進歩させるようなプロダクト

これは言葉が気に入りました。どこかで使おうと思います。 1ビットしか世界が進歩しなくてもそれができる状態になったプロダクトはさっさとローンチしろ、というお話で使われていた言葉です。

 

うまくいかなかった点も多かったが、これはいつものことだ。うまくいかなかった点はこれから直していけばいい。どうせ私は死ぬまでうまくいかない点を直し続けることになるんだろうが。

カッコいいなと思った言葉。これもいつか使いたい言葉としてここに記録しておく。こういうことを言えるおっさんになりたい。 

 

ソフトウェアが世界を食う

今やソフトウェアはあらゆる産業のバックボーンとして普遍化している。いわばソフトウェアが世界を食ってしまおうとしているのだ。

抽象的でフレーズが気に入ったというのもありますが、正に世の中がこういう風に進んでいるなと私は思っています。他のエントリでも何回か書いていますがITシステムの中で真の価値を提供しているのはアプリケーションです。言い方は悪いですが、インフラはツールであってユーザに大きな価値は提供できない。世界を食ってしまうほどの巨大な何かはアプリケーション(ソフトウェア)だと思っています。インフラはインフラで面白いんですが。

 

本人が勉強熱心であれば、ウェブやモバイルの複雑なアプリケーションを驚くほど短時間で完成させることができる。ソフトウェア・スタートアップを起業してベンチャーキャピタルの門を叩くために、マイクロソフトやオラクルのような大企業で5年、10年と下積み生活をする必要はまったくない。

こういう言葉ですよ。前項で劇薬だとか書きましたが、生きた言葉で綴られたこういう本で、「大企業で下積み生活をする必要はない」とか書かれていると、「そんじゃ俺もやったろやないかい!」って思ってきちゃうんですよ。

 

おわりに

何回も書きましたが、良書です。本当に手元に置いておきたいと思える本です。自分で言うのもなんですが、私は割と悲観的、否定的に物事を考える癖があって大抵の本は見下した状態から入るんですが、今回は完全に覆されました。私は今までビジネス系の本は50か100かくらい読んでいると思うんですが、トップクラスです。

 

このエントリを上からここまで読んでくれた方は、狂信的とか信者かと思うかもしれません。私もこのエントリを書きながらプレビューを見たらそう思えました。ちょっと気持ち悪いくらいに。でもそれだけ良い本なんです。

内容的、分量的に誰にでも薦められる本ではありませんが、スタートアップの世界を覗いてみたい方や実際にスタートアップとして走り始めている方、SIerの中で疲弊して無気力化してしまった方は是非読んでおいた方がいい本です。

 

おわり