ITニュースエントリです。
今回はこちら。
要約
IPAの基本情報技術者試験で9歳の子が合格した。最年少更新!そして、IPAの担当者が以下のようにコメント。
9歳の合格者について「あすからでも顧客企業のシステム開発に関われる水準」と話している。
元のニュース自体が短いので要約は以上です。
所感
私がSIerに勤めていたときに、何度受験しても、どんな試験対策講義を受講しても合格できなかった社員がいましたので9歳で受かるなんてホントにすごいと思います。
いま19年春の問題をザァーっと見てみましたが、問題文中にはこんな言葉が普通に出てきています。
機械学習、冗長構成、最適化、電子政府推奨暗号、秘匿性、脆弱性
問題を読めて、内容を理解し、正解の選択肢を選べるってホントすげぇなと思います。
19年春の問題が公開されているページ
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:問題冊子・配点割合・解答例・採点講評(2019、平成31年、令和元年)
素直に称えたい。
さて、「すごい!」と賛辞の言葉を並べてはい終了とは行きません。そのためだけにこのエントリを書いているわけではないのです。
もう一度引用しますけど、ここね。
9歳の合格者について「あすからでも顧客企業のシステム開発に関われる水準」と話している。
これは言わせておくれ
ツッコミを入れさせていただきたくお願いいたします。基本情報取れば仕事が出来るのか?
ちゃっかり「基本情報合格=仕事できる水準」アピールしてんじゃないよ!
水を差したいわけじゃないけど、「基本情報に合格した=仕事できる水準」ではないと私は思います。無理じゃないですかね。別にディスりたくて書いているわけではありませんが。
ベンダー非依存の技術知識問題
IPAの試験ってベンダー非依存の試験問題になるため、例えばデータベースの問題にOracle固有の何かが出題されるってことがありません。つまり仕事内容・作業内容に直結する問だけで構成されている試験ではないんですよね。
私はサーバ屋が本業なんですが、新人が入ってきた時に「基本情報は持っているが、サーバにアクセスしたことは無い。もちろんプログラミングも出来ない」なんて人材、、、もとい人財、普通にいますからね。
コード書けなくても受かる資格
じゃあアプリ屋さんとしてはどうなんだろうか。基本情報処理試験の対象範囲にプログラミングがありますけど、受かったらコードを書けるのだろうか。
んな訳ないっすよね。だって問題用紙に書いてあるコードを読んで間違い探しをしたり、内部状態をトレースしていくくらいのレベルですからね。読めるかもしれないけど、試験に受かったからといってコードを書ける人材という訳でもないです。
「基本情報に合格した」=「仕事の前提として持っているといざという時に役立つかもしれない基礎の知識がある。仕事できるかは知らん」ということなら納得なんですが。
なぜ「顧客のシステム開発に関われる水準」とIPAの人は言うのだろうか
「顧客企業のシステム開発に関われる水準」って書かれてますけど、なぜ「顧客企業のシステム開発」なんだろうか?普通に企業のシステム開発って言えば良いんじゃないだろうか。
- 顧客企業のシステム開発と自社向けシステム開発に違いがある?
うーん試験問題の枠の中で考えたら違いは無い気がしますねー
- システム開発=顧客企業のシステムと考えている?
これがこの担当者の発言の意図だと私は推測しています。
全部が全部そのように考えているわけではないでしょうけど、現実を見た場合の国内IT産業とりわけSI事業のメインストリームは昔から変わらず「システム開発=顧客企業のシステム開発」になっているので、そのような現実を見た表現なのだろうと思います。
別に内製が正義、外注が悪、と単純に考えているわけではありませんが、世界的トップ企業は内製している率が高いとも聞きます。
IPAにとっては、企業のシステム=外注するもの、なんでしょうか。日本のIT業界をそういった方向に持っていきたい(厳密には維持したい)と思っているのでしょうか。元記事は短いものなので、言いたいことを全部言えているとも思ってませんが、どうも強い気持ちの感じられない便乗アピールコメントに見えます。
単に現実を見てこういう発言が口から出てきただけなのかもしれませんし、その事実が望ましい状態と考えているのか、真実はわかりません。冒頭で紹介した記事を見た瞬間に、私の頭の中の”何かおかしいぞセンサー”にびびっときたので、このエントリを書いてみました。これ以上は推測どころか邪推・言葉狩りになってしまいかねないのでやめておきます。
以上。