読書感想文
「モチベーション3.0を読んで考えたこと」
別にアフィリエイトしてるわけではないですが、この本です。正確にはこの本のハードカバー本なのですが、amazonに商品がないようで文庫版(?)を貼ってみました。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 文庫
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初版が2010年で、当時から気になっていたんですが購入には至らず、ようやく時間が出来たのとBOOKOFFで見かけたことから読みました。
もくじ
まずは本の内容をまとめる
この本による著者の主張は、人間の行動の動機(モチベーション)は大昔から変わって来ている。そして現在、大きな成果を上げるためにここ200年の間に用いられてきた人を動かすための動機づけ(モチベーション2.0)とは異なる新たな動機づけ(モチベーション3.0)が重要である、というのが大きなテーマです。著者はその動機づけを以下の3つに分類しています。
- モチベーション1.0 生存することに対するモチベーション
食糧を探す、生存を脅かす生き物から逃げるといった、純粋に生き残ることそれ自体を目的とした行動の元となるモチベーション。この動機づけは数万年前の石器時代のもの。
- モチベーション2.0 報酬を貰うこと(又は報酬を削る罰を受けないこと)に対するモチベーション
社会活動を行う中で報酬を貰うため、または罰を受けないことを目的とするモチベーション。ようはアメとムチのことで外部からの干渉を元に発生するモチベーション。これはここ200年の間、利用されてきたもので経済の発展に必要不可欠だった。
- モチベーション3.0 学びたい、創造したい、世界をよくしたいという思いから生じるモチベーション
学びたい、創造したい、世界をよくしたいといった自己の内部から発生するモチベーション。生産性を高め、創造的な仕事をするためにこれからはこの考え方が必要不可欠である。
モチベーション3.0は以下の3つの要素から構成される。
1つ目は自律性。人は自由の中で自律的に何かを行うことで大きな成果を上げることができる。Googleの20%ルールやアトラシアンのフェデックスデーの取り組みは大きな成果を上げている。
2つ目はマスタリー(熟達)。人には何か価値があることを上達させたいという欲求があり、その欲求を満たすために行動することで成果をあげることができる。
3つ目は目的。崇高な目的(例えば誰かの役に立つこと)を設定することで、人はそれに向けて大きなエネルギーを発生させ多くを達成できる。
特に大きな経済発展があった19、20世紀ではモチベーション2.0が用いられてきたが、今後はモチベーション3.0の内発的な動機づけに基づく行動が重要となる。この内容について様々な例を挙げて説明するのが本書の大まかな内容となっています。
自分の周りのことを考える
IT業界
本書の中でも紹介されていましたが、IT業界は割とこの内発的な動機づけを実践している企業が多い印象です。有名なのはGoogleの20%ルールでしょうか。以前何かで見たAdobeのキックボックスも同様の取り組みです。
まぁこれらはあくまで海外の会社の事例ですね。日本の会社はどうだろうと「20%ルール+日本企業」でググってみましたが、これという事例が出てこないです。おそらくWEB系の企業では名前だけ違うような同様の取り組みをしているか、名前を付ける必要もないほど根付いているのだ思っています。たぶん。
私の会社・チーム
私は国内の中堅SIerに勤めています。私が勤めている会社は典型的なモチベーション2.0の考えで動いている組織です。社員は適切に管理しなくてはならない、熟練する必要はない(人並みに出来てクレームが来なければいい)、崇高な目的は無く給料が貰えるから働いている、とそんな組織。企業や部署で掲げているカッコいい目的は有った気がしますが、覚えている人はいないでしょう。
私が勤めている会社のことをベースに書いていますが、中堅~大手のSIerは大体同じなんじゃないかと思います。GoogleやAdobeはサービス、ソフトウェア企業なので同じIT業界ですが、同じように比較することはできません。
SIerという業種がよくないのでしょうか。ちょっとこの辺まで突っ込んで考えると、余裕で1エントリ分書けてしまいそうなので、このエントリでは考えません。
とはいえ自分の周りにはこの本のエッセンスを活かすことができるのではと思いました。例えば、部下には自由を与え自律的にやらせる、、、、、いや無理だな。いきなりは無理。まず管理職が自律的に部下を働かせるコンセプトを理解しなくては、トラブった時に「自律性を持たせるために彼を信じたんだが、、、」って話になって部下はまた管理されるやり方を望んでしまう。
じゃあ本書のマスタリーはどうだろう、特定のスキルを極めていくこと、これも難しい。仕事をする中で必要最低限の知識習得はするが、それ以上は業務時間内にやる余裕はない。会社の仕組み上、業務時間に必要以上の勉強をすることは規則で出来ない。私はエンジニアリングが好きだから家に帰っても好きにPCをいじって遊んでますが、周りの人たちはやらないだろうなぁ。技術に拘っている人は少数だし、このご時世退勤後に勉強しろって言ったら大変なことになるし。
最後の目的はどうだろうか。自分以外の「より大きな目的」は持てるか。これはある種の心持ちであると思うが、モチベーション3.0の構成要素であるこの目的は日々の理不尽とも言える各種の圧力で刈り取られてしまう。
うわー暗いなぁ、何か書いていて凄く気持ちが落ちました。私個人としてはマスタリーを目指していくことしかできない気がします。しかしこれらの出来ない理由をもう少し踏み込んでいけば、改革が必要と言われる働き方を変えるアイディアが出てくるかもしれない。今は思いつかない。
本の感想
最後に本の感想で締めます。
まずは本書を読んでよかったなというのがざっくりとした感想です。初版2010年の本ですが、内容は古くなく、むしろ働き方改革が叫ばれている今現在、非常に重要なことが書いてある良書だと思いました。著者の主張を補足するための実験内容や同じような主張をする人の根拠を示すなど、若干だらつく箇所もありますが私はそれを含めてしっかり書いてある本だと感じました。
今は働き方改革といって上っ面だけの対応が多い印象を受けていますが、本来は本書に書いてあるような、人はどんなモチベーションで行動を起こすのかという本質的なところから”自分たち流”の対策を打っていくことが必要だと思います。
一方で本書に納得できない部分もあります。本書では、モチベーション3.0が重要だと科学的に証明されているのにビジネスの世界ではその知見が活かされていない、という主張があります。確かに実験ではそうですが、実際のビジネスでは「色々ある」わけで、そういった部分には触れずに、科学的にはこうだ、という著者の主張には若干違和感を覚えました。私が一冊の本に対して答えを求めすぎなのかもしれませんが。
このように納得いかない部分もありますが、全体的には良書だと思います。
おわり