ホンモノのエンジニアになりたい

ITやビジネス、テクノロジーの話を中心とした雑記ブログです。

美容室の兄さんと考える技術と価値

こんちわ。

この年末年始にボッサボサに伸びた髪を切りにいつもの美容院に行ってきました。その時に担当してくれたお兄さんと話した内容が興味深いものだったので、このエントリにまとめてみようと思います。

美容師とSEにとっての”技術”は似ているなと思ったお話です。

 

もくじ

 

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美容院で話をした内容

ここ1年くらいいつも同じお兄さんに切ってもらっているので、何となくお互いのキャラクターが見えてきていて、楽しく雑談していました。概ね話の流れは以下となります。

 

最近世の中は景気がいいらしいね

  ↓

株とかやったら儲かるのかなぁ

  ↓

地震かミサイルが来るまではいい感じなんじゃないですかね

  ↓

金正恩のセンスって先を行ってるよね

  ↓

あの髪型すごいよね

 

という話をしていたんですよ。そしたらお兄さんは「俺にはあのカットは出来ない」と言ってきたんですよ。最初はミスったら殺されるからという意味かと思ったんですが、よくよく聞いてみるとあのヘアスタイルに仕上げるには相当高い技術力が無いと無理だということが話の流れでわかりました。

 

その美容師のお兄さん曰はく、「ウチの店には出来る人いないと思う」とのこと。

「じゃあ、あのカットを本気でやれる人ってのは国内トップクラスとかになるんすか?」と聞いたところ、熟練の床屋のオッサンでないと無理じゃないかとか。

 

なんで床屋やねん、と思ってまた聞いてみると美容師と理容師(床屋)を比べると、カットの技術力で言うと理容師の方が断然上という話でした。

如何に可愛くするか、格好良くするかという軸では美容院の方が上だけど、純粋にハサミを使ったカット技術で言えば理容師の方が上だと。

 

どうやらお兄さんはそこに葛藤を抱えておられるようでした。

 

曰はく、

「僕ら美容師は理容師と同じでお客さんの髪の毛を切ることを中心に身だしなみを整えることが仕事の本質なんです。そしてその本質であるカットの技術は理容師が上です。しかし僕らは平均的な理容師よりも高いお金をとって仕事をしている。」と。

 

もちろん、そこにはただ髪を切るだけではなくて、セットの仕方まで考えて親身にアドバイスをしてくれたり相談にのってくれたりと、昔ながらの床屋とはサービスの方向性が違う、とは言っていましたが技術力の低い自分らが、より高い技術を持ってる理容師より高い価格でサービス提供しているのは何かがおかしいんじゃないだろうかと、無い頭を使って(本人談)悩んでいると言っていました。

 

これを聞いた時、美容師さん達にも色々あるんだなぁと思いましたが、よくよく考えると何かに似てると気づきました。

 

 

コードを書けないSIer

 

あ・・・と気づいたんですね。

この話、コードを書けないSIerの話に似ていると。

 

ITシステムの本質は面倒くさい処理の自動化だと私は考えています。なので本質的な価値を提供するためにはプログラムを書けることだったり、プログラムでどう表現するかという大枠の理解が必要条件だと思います。

 

しかしIT業界ではよく言われることですが、業界にいるのにプログラム書けない人が日本にはたくさんいます。その代表格はSIerの中の人。

 

勿論、美容師さんたちと同じで、ただボッタくっているわけではありません。システムのカットオーバーまでお客さんを誘導しながら一緒にプロジェクトを進めたり、運用や保守のことまでを考えてトータルコーディネート(っぽいことを)するのがSIerなので、プログラムを書けなくても、価値は提供しています。

 

しかしITの本質はやっぱり自動化であって、それを表現するのはプログラムなんですよね。システムを提供する側にいながら、システムの本質たる部分が全くわからんというのはどう考えてもおかしいと思います。

 

私もコード書けと言われたら書きますし書けますが、それは本職の人たちが作り上げるモノに比べると非常にレベルが低い。

 

お兄さんも同様で理容師のサービスと同じようなことは出来るが、同じレベルではできないと。

 

これに気付いた途端に妙な親近感が湧いて「わかる!わかるー!」と、興奮して理由を説明しましたが、理解はされなかったですね。キョトンとした顔で、

「IT業界で働いているのにプログラムできないの?流石にハサミ使えない美容師はいないですよwww」と。

「できないもんはできないの、そういう人いっぱいいるから」と説明しましたが、最後まで理解はされなかったですね。

 

 

市場が要求するモノ

 

そして最終的に思い至ったのはこれです。

「市場は高い技術を求めているわけではない」

 

まぁ何を提供するかによりますが、技術力の高い会社の製品が必ず売れるわけではありません。使いやすいインタフェースだったり、洗練されたデザインだったり、市場が欲しがる製品が売れるというのが今の時代です。

 

世の中の特に若者の多くは、高い料金でカット技術も相対的に低い美容室を選び利用します。それは本質的な部分で高い技術力が無くても、総合的に綺麗になる格好よくなるからです。利用者は高い技術を求めているわけではなくて、綺麗になるために料金を払っているわけです。

 

それでは我らがSIerはどうだろう。

日本ではSIerがプロジェクト進行からコーディング(実態は外注)、運用周りまで全てお任せくださいスタイルでマルっと高い料金で受注する形が多いです。高い技術力を持っている人は少ないけど、トータルコーディネートで全部責任を持ってやるから高い料金払ってくださいねビジネスです。

 

美容室もSIerも業界の中での技術水準はトップではないものの、高い料金を客から貰うという点で同じです。

しかしこれから先のことを考えるとちょっと事情は違いそうだと思います。

 

美容室が提供するモノは綺麗になるという、いわゆる体験型のサービスです。価格帯によって色々と違うのでしょうけど、ヘアスタイルを変えることは楽しい体験だと思います。若かりし頃に色々とチャレンジしていた時は、カッコよくなるかなぁ、大失敗しないかなぁとドキドキしていたことを覚えています。こういうユーザをドキドキワクワクさせる楽しいサービスはこれからも利用者に親しまれるのだと思います。「行きたい!利用したい!」と思えるサービスは。

 

翻ってSIerはどうか。

単純に比較はできないですが、今のSIerにはユーザの心を揺り動かすような仕事はできない気がします。色々なところで言われていることですが、デジタルビジネスの世界に入り込んで稼げるシステムとか、本業の売上をブーストさせるシステムを提供できないと、いつまでも金食い虫の扱いを受け続けるのだと思っています。

 

だからつまりは開発力・技術力の無いSIerはシステムコンサルになってITの力でどれだけ素晴らしいことができるかを語り、それを実行していけないと、これから先明るい未来は無いと思いました。

 

おわり。