ホンモノのエンジニアになりたい

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ギャンブル依存症対策にカメラを活用?順番が違くないですか。

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とても奇妙なニュースに思えました。競艇場に設置したカメラと画像解析技術を使い、ギャンブル依存症の人を追い出す仕組みの実証実験を行うというニュース。


本日はこのニュースをオカズに愚考を進めてまいりましょう。

ちなみにこれを書いている私はギャンブルとしての競艇にはあまり興味がありません。以前レース予想システムを作ろうとしたことがある程度です(お蔵入りしましたが)。あとモンキーターン(漫画)は好きです。そのくらいの人です。

 

 

ニュースの概要 

19/11/29の日経新聞朝刊に掲載されたニュースです。(日経は無料登録すると月に10本まで全文を読めます)

 

以下、概要です。

競艇の運営元とNTT東日本が連携して、画像解析を使ったギャンブル依存症対策を実証実験する。会場や場外券売場にカメラを設置して来場客の顔を撮影、事前に登録されていた人物と特定できた場合、職員が注意喚起する。舟券の購入が禁止されている20歳未満の来場者の発見にもつなげる。運営元は実験結果から各地の競艇場への導入を検討する考え。

政府は4月にまとめた基本計画で公営ギャンブルの主催者にギャンブル依存症対策を求めている。

 

競艇の運営元ニュースリリース

こちらは日経のところで書いた内容もあるので、要約します。

  • ネットワークカメラを使った入場管理の仕組みの有用性を検証する
  • ギャンブル依存症を防ぐことを目的としている
  • 19年4月に策定された「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」への対応
  • 競艇界は「新たな入場管理の方法の調査研究」を行うことになっている。
  • 予め声掛けの依頼があった入場者と20歳未満の入場者を検知する技術を検証評価

 

ギャンブル等依存症対策推進基本計画

 運営元のニュースリリースにある「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」とやらはこちらです。 

直撃PDFはこちら。P.28からが競艇。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gambletou_izonsho/pdf/kihon_keikaku_honbun.pdf

本件の該当箇所を引用します。

第2 モーターボート競走におけるアクセス制限等

(3)対策

また、各競走場及び場外舟券売場における入場制限において、対象者を特定する精度を向上させるための新たな入場管理方法の調査研究を実施する。平成 31年度から、対象者を特定する技術の先進事例を参考としつつ、ICT 技術を活用した入場管理方法についての研究を開始し、3年を目途とした研究を踏まえ、その導入の可能性を検討する。

 少し関連するところ

3 購入限度額設定システムの早期導入等によるインターネット投票のアクセス制限の強化

本人申告により購入限度額の設定を可能とするシステムの開発及び改修を行うべく、次期システム改修時期である平成 34 年度までの導入に向け、必要となるシステムの仕様等について検討している。

 

「何かおかしいぞ」ポイント 

圧倒的、、、圧倒的、違和感っ!!!

なんか、みんなおかしくなってしまったんじゃないだろうか。そんな気がしてきます。

 

ここまで引用・整理した内容から考えて、画像解析技術がウンタラってのは最後の方にあるべき手段だと思うのです。普通に考えて、登録制にすればいいだけじゃないですか(笑)。

 

本人確認を行ったうえで、顔写真付きの「ボートレースカード」のようなものを発行し、本人以外が舟券を買えない仕組みを導入すれば、それで95%は目的を達成できると感じます。公営ギャンブルの払い戻しで得たお金は所得の一部となり課税対象であるので、他人に購入を依頼するというのも難しくなります。

 

「画像解析技術を使って」とありますが、どれだけの効果が出るのかわからないものを検証するより、弾くべき人をキチンと弾ける仕組みとして導入すべきではないでしょうか。そりゃ20年後の未来を想像すると、顔認証なんかの技術で自動的に判定されるって仕組みになっていると思いますよ。が、今はまだそういう時期じゃないでしょうに。

 

この手の最新技術の導入検証って向き不向きがあると思うのです。ユーザ側に純粋なプラス効用を与えるものについてはガンガンやってみるのがいいです。より便利になるような仕組みですね。しかし、今回のような「マイナス効用の発生を防ぎたい」という動機のあるものは、どれだけ効果があるかよくわからないものを使うより、確実に効果のあるものを使うべきです。

 

ギャンブル依存症ってWHOが認定している病気ですよね。その治療として、どれほどの効果が出るのか全然わからない最新治療と、一定の効果が見込める従来型の治療、どっちを選ぶかという話。普通まず最初は後者を選択しますよ。で効かなかったら前者の治療を試してみるってのが自然な流れになると思います。治療の一環と考えたら、「実証実験やってみようぜっ♫」なんて話にはならないと思うのです。これ、他の病気に置き換えても同じ発想するんですかね。

 

こうすりゃいいじゃん!

前項にも書きましたが、顔写真付きの「ボートレースカード」を作るのが最も確実で、無駄な技術的チャレンジも要しない方法だと考えます。このカードの肝になるのは、本人確認の厳重化の部分です。ギャンブル依存症の方が舟券を買えないようにする、未成年者も買えないようにする、その方法として最も実効性が高いものです。

 

そしてこれを拡張していくと、「何もボートレースに限る必要はないんじゃないか」という考えに至りました。ようは「公営ギャンブル利用カード」として競馬・競輪・オートレースも含めてすべての公営ギャンブルに使える本人確認の共通カードにすればいいのではないかと。

そして所得や貯蓄額から期間内に使える上限額を設定して、それを超える額はベットできないようにする。あるいは利用者が年あたりの最大購入額を申告するなどのストッパーを作る。競艇では「無理のない資金で、余裕を持ってお楽しみください。」なんて標語を掲げているようですが、のめり込むとストップが効きづらいのがギャンブルです。こういう強制的なストップをかける仕組みが必要なのではないでしょうか。

 

いや、待てよ。何も本人確認を厳重化するのであれば、ギャンブル専用カードである必要はないですね。言ってしまえば「大人カード」として、酒・タバコの購入にも使える形にすればもっと便利になる。

 

むむむむ、、、ここまで考えて繋がった。これさぁ、マイナンバーカードでやればよくないですか?公営ギャンブルやる人にはマイナンバーと口座の紐づけを必須にする。そうすれば政府ゴリ押しのマイナンバーカードの普及にもつながる。

 

ぬぬぬぬ、、、ちょっと待って。だったら、究極的にはIR関係で作ろうとしているカジノと共通の仕組みにすればいいのではないだろうか。マイナンバーカードを使って入場制限を設けるという話があったではないですか。一緒にしてしまえば、システムを自前で作るなんて非効率なことがなくなるし、とてもハッピーなんじゃないだろうか。うん、とても素敵なことに思えてきました。で、さらに税金のとりっぱぐれも無くなりますね。

 

ギャンブル依存の人は自分のカードで舟券を買えなくなったら、他の人に買ってもらうことを考えるでしょうけど、税金が絡んでくると安易に引き受けてくれる人もいなくなる。また買い方に注目することでギャンブル依存の方の参加を更に防ぐこともできると思います。買おうとしている舟券の組み合わせを分析すれば、他人から依頼された舟券の購入が含まれているか否かを判別することはそこまで難しくないと思います。

 

更に自分の購入履歴が残って、それを閲覧できるようにするのも効果的だと思います。自分の記録の中に他の人の記録が入り込むのって嫌がる人も多いでしょう。また記録を閲覧できるということは累積の負け額を表示することも容易いわけです。なんだかんだ言って自分の負け額を目の当たりにすることがギャンブル依存症の一番の防止策になると思います。

 

何もカメラを設置して画像解析をするなんて、効果の見えない検証事業をやるよりも、こういうある程度の見通しが立つ、確実な対策から始めていくべきだと考えます。画像解析なんてのは、こういう対策をやったけど、それでも防げない例外ケースを補完する役目として使うのが、今現在のベストな組み合わせだと思うのです。

 

もうオママゴトはもうやめよう

このセクションは『深読み・邪推・揚げ足取り・重箱の隅を突く』を合言葉にした愚考セクションとなります。

いやね、明らかにおかしいんですよ。冒頭で「ギャンブル等依存症対策推進本部」なる政府組織へのリンクを貼りました。そう、政府絡みの話なんですよ。これはとっても頭の良いお役人様が噛んでいる話であって、その辺のオジサンの思い付きではないのです。となると『やっぱり何か裏があるんじゃないのか』と考えてしまうのが真の愚考家というもの。

 

ギャンブル等依存症対策推進本部

お役人サイドの話。公営ギャンブルの収益は実施主体と地方自治体のお財布に入るようです。となると、お役人様は「出来るだけ多くの賭金を集め」、「世論に叩かれないように依存症対策をやっているポーズをする」がベストな行動になるのではないか。

私のような庶民からみると、今回の施策は正にこの行動原理に従っているように見えます。実効性がどれだけあるのかわからない検証事業をやって、「やっているポーズ」をとっているようにしか見えません。むしろ依存症対策が進み、プレイヤーが減ってしまうことを懸念しているまであるように見えます。

また、これは完全な印象論ですが、地味で実効性のある施策よりも、効果があるのかはわからないけど派手で人目を惹くことをやりたかった、という印象も受けます。なんか如何にもやってる感が出ますし、みんなよくわからないだろうから「なんかすげぇことやろうとしてるぞ」と、意識を本来の目的(依存症を減らす)から意図的にずらしているようにも感じるのです。

私には納税者としての立場もあるのではっきり書きますが、「オママゴトにしか見えない」です。

 

(以下、超愚考)

ここまで書いてハッと気がつきました。どうにも思考を誘導されている気がするのです。だってあからさま過ぎるでしょう。これは何か隠したい事実があって、そこから目を背けさせるための作戦なのではないか。

 

はて、御上の真意はどこにあるのだろうか。明らかに優先順位の違うことをさせているわけですが、、、

 

そうかっ!カメラだっ!我等国民にカメラで監視されることを当たり前のことだと思わせようとしているんだ。その実績作りとして、立場の弱い、そして監視されて然るべき(と多くの人に思われているであろう)公営ギャンブルを利用しているに違いない。

 (以上、超愚考)

 

全国モーターボート競走施行者協議会

この項の冒頭にも書きましたが、重要なことなのでもう一度。ここは『深読み・邪推・揚げ足取り・重箱の隅を突く』を合言葉にした愚考セクションです。

私が今回のニュースを見た時に最初に考えたことはこんなことでした。「なぜNTTなんだろう?競艇運営元とNTTにお友達でもいるんじゃないだろうか。」と。本エントリで取り上げている画像解析の検証事業はNTT東日本との共同事業とのことでした。

 

調べた結果だけ書きます。

  • 協議会の副会長である箕面市長は元郵政省(現総務省)の官僚だった
  • 箕面市の防犯システムは総務省からの交付金でNTT西日本ー中国から調達

で、今回は共同検証事業のパートナーとしてNTT東日本が上がっていると。総務省といえば通信事業の監督官庁ですよね。別に何が悪いってわけじゃないですよ。お友達なんですかね。いや、違うか、通信といったらNTTだし、5G事業もやっているようだし、きっと画像解析事業もすごいのだろうし、ワンストップで全部やってくれるんだろうし、きっとベストな選択なんでしょう。うん。

 

 

終わりに

今回はどうも見た瞬間におかしいぞ、と感じたので考えを深堀してみました。どんな思惑があるのかは知りませんが、やっぱり目的と手段がごっちゃになっているような印象があります。IT関連事業の鉄板ダメパターンを踏んでいるような気がしております。そしてそんなツッコミを見越したかのような『実証実験』という保身ワードまでくっついていると。

流石に監視社会につなげるって話は妄想ですけど、やるべきことを、やるべき順番で、やらないといけないんだと自戒の念をこめてここまで書いてみました。

えっ?考えすぎ?知らんがなっ!