ホンモノのエンジニアになりたい

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楽天の通信キャリア事業を愚考する。競争は激化するのだろうか。

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師走でごわす。「今年のネタは今年のウチに」をテーマに12月を駆け抜けようと思っています。今回のエントリは楽天の通信キャリア事業について愚考していきます。

 

 

現状の整理

本件、楽天の通信キャリア事業は多くのメディアに取り上げられているので、ここに多くのことを書く必要もないかと思います。ざっくりと特徴と状況を書くと、

 

  1. 完全仮想化ネットワークを使うから高品質・低価格(と謳っている)

    「フル仮想化」した楽天の携帯電話ネットワークは何がすごいのか | マイナビニュース

  2. 寡占3社との対決姿勢
  3. 19年10月にサービス開始予定だったが、5000人限定のテスト色の強いサービスしか始められていない
  4. 基地局整備の進捗が遅延。東名阪は自社回線、それ以外はKDDIの回線を借りて運営する
  5. 通信・回線品質が悪い
  6. 管轄の総務省は激おこ。既に三度の行政指導を行っている

こんな感じで報道されている。

 

このエントリを書くために、情報を探し回っているなかで途中混乱してしまったのですが、楽天はMVNOとしての顔と、MNOとしての顔があり、これは基本的に別物です。

ASCII.jp:MVNOの方の楽天モバイルって今どうなのか、加入して確かめた (1/4)

MVNOとMNOとは 格安SIMカード初心者ガイド - iPhone Mania

このエントリではMNOとしての事業について書いています。19年12月現在、楽天モバイルのWebサイトにアクセスすると、スーパーホーダイ¥1,480/月というバナーが表示されますが、これはMVNOの話。

 

MNOとしての料金プランは現時点で公表されていません。ちょうど2日前に「仮の料金プランが流失しちゃった」というどうにも胡散臭いニュースが報じられていました。

 

10月からサービス開始すると言っていたのに、現実には実験途中の段階で、総務省が激おこぷんぷん丸という状況です。

 

良いところ・期待するところ

SIMロックを不要なものと断言しているところ

「SIMロックは根本的にいらない」楽天、携帯3社に指摘 - Engadget 日本版

SIMロックという囲い込みの象徴を否定しているところですね。Engadgetの記事によると、大手三社は「不払いのリスクがある」という意見を出したそうです。

確かに不払いのリスクはあると思います。でもそんなのは、分割払い&口座引き落としにしている人ぐらいしか発生しないものだと思います。クレジットカード払いや一括の人も一緒にロックを掛けるなんてのはナンセンス。そもそもクレジットカードって信用ある人しか持てない前提のものだから、クレジットカード自体を否定しているとも取れます。こういう難癖つけて囲い込んでいるところが、見ていてみっともない。嫌悪感すら感じるところです。

楽天は後発なのでシェアを伸ばすために現行の寡占三社によるSIMロックを撤廃させたいのでしょう。そういうポジショントークにも見えますが、キッチリおかしいところをおかしいと言っているところは今後に期待できるところだと思います。

 

縛り無し

楽天、格安SIMで“縛り”廃止 自社回線プランも - ITmedia NEWS

「MNOでも縛りは設けない」(楽天モバイル山田善久社長)としている。

前節に書いた理由と同じで、楽天にとって寡占三社による縛りプレイはビジネス上の障壁となるものです。どうもやっぱりポジショントークに見えますが、目指すところは御上と国民の願うところと同じです。

 

料金が安い(たぶん)

誰もが楽天MNOに期待しているのは、ここですね。MVNOと比較して基地局を自前で持たないといけないので、普通に考えるとどうしてもMVNOよりコスト増になってしまう気がします。MVNO事業者として回線を借り受ける費用と、MNO事業者として基地局を持つ&運営する費用、やっぱり後者の方が高くつくイメージがあります。ShareとOwnの比較ですからね。例えばカーシェアやクラウドサーバなんかを比較して考えると、やっぱり直感的にはOwnの方が高くつく気がするんです。

まだ料金プランは発表されていないですが、少なくとも寡占三社と比較して安くはなるでしょう。もし、これが逆に「MVNOよりも高くなる」となった場合、「それって改悪やんけ」という話にしかならないわけです。総務省が付きっ切りが御指導しながら、蓋を開けたらユーザ負担が高くなっただけ、となると楽天だけじゃなく御役人さんまで吊し上げになりますからね。ここは本当に期待したい。

 

不安なところ

複雑な料金プラン

いまのところ寡占仲良し三社に対しては否定的な態度をとっているように見える楽天モバイルですが、MVNOのWebサイトを見ると、どうも三社の劣化コピーのように見える部分もあります。

楽天モバイル: 特典・キャンペーン

19年12月5日現在、このページにアクセスすると、20個以上の特典・キャンペーンが表示されます。これはMVNOのやつだから違うっちゃ違うんですけど。我等庶民はキャンペーンで安くなることは望んでいますが、そういう恩恵を得るために複雑なものを理解しようという気はサラサラ無いのであります。そこに付け込んでいるのが寡占仲良し三社であり、楽天が同じことをするのを我々は望んでいません。

いやね、楽天さんだって分かってるでしょう。我々が望んでいるのは、食事処や居酒屋のメニュー表みたいなレベルなんですよ。「あぁ、サラダを追加すると100円かかるのね」とか「串1本100円なんだ」とかその次元。「22時以降に、つくねを3本以上注文したお客様のうち、5人以上のグループで来店されていて、その中に30代女性が2人含まれる場合、ネギマを1本サービスしますが、ハイボールを3杯同時にご注文いただくことが条件となります。」なんてものは誰も望んでいないのです。

 

端末の安売り

楽天モバイルのWebサイトを見ると、自社のTwitterが埋め込まれています。これがどうも。。。

 

 

これって、特価販売やキャッシュバックの原資はどこから来ているんでしょうか。「SIMロックは不要なものだ」とか大手三社に対抗する姿勢を見せているのは評価できるんですが、ツイッターを見る感じ、売り方は寡占三社とそう違いはないように見えてくるのです。「ガリバー倒す」と鼻息荒く言っていますが、やってることは同じ。これは残念。

 

本当に仮想化ネットワークで5Gを捌けるのだろうか

楽天モバイルネットワーク、世界初のエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークにおいて実証実験に成功 | 楽天株式会社

ちょっと技術的な話です。私はネットワークスペシャリストという権威ある国家試験(笑)に合格しているのですが、最近の技術はよくわからんし、そもそもネットワークの技術的な話はだいぶ忘れてしまいました。

↑のページにかいつまんで技術的な話が書いてあります。気になったのはここ。

ソフトウェアアップグレードのみで容易に5Gへの対応が完了するため、短期間での市場投入を可能とします。

ようは、今までの通信事業者はソフトとハードが一体となった専用機器を使っていた。けどそれを分離して、ハードは汎用的なサーバを使うようにしたと。汎用的なサーバは調達が容易ですので、サクッと用意してソフトもサクッとコピーして対応能力を簡単に高めることが出来ますよ。こういう話。

楽天さんほどの大IT企業にとっては、この程度の制御は余裕でできるのかもしれません。しかし、5Gになったときに本当に5Gの恩恵が得られるほどの速度が出るのか、私は自分の目で見てみるまで信用できないなぁと思います。 

 

違和感のあった総務省の怒りから愚考

ここのところ「総務省おこ」というニュースを見かけなくなりました。夏から秋にかけてはしょっちゅう見かけたんですが、10月からのテスト事業が始まって以降、あんまりガミガミ言っている報道は見かけません。

 

総務省は楽天に対して三度の行政指導を行ったそうです。いはく「ちゃんと基地局整備の進捗管理しろよ!ふざけんなよ!」こんな感じの御指導ですね。公共の電波を管理している総務省が怒るってのは、まぁ確かにそういう御役目であろうと思います。でも、ぶっちゃけ国民はそんなに怒ってないですよ。楽天が参入するために、何か我々の側で不便になったり、何かを差し出したってわけでもないし。

 

「総務省が激おこ」って正直何か違和感があるなと思っていたんです。総務省さん、自分たちが企業に舐められてるから怒ってますよね?国民の財産である電波を使ってるのに!っていう雰囲気を一切感じないんですよ。

 

個人的にはそんなに怒るんなら割当てた電波を剥奪すればいいんじゃないかと思います。どういう契約なのかは知りませんが、契約内容に従ってペナルティを課すだけの話だと思うのです。契約上ペナルティに関する約束がないなら、それは総務省がしてやられたって話じゃないですか。そうなると、あなた達は怒る立場ではなく国民に怒られる立場になると思うんです。誤魔化してません?気のせいかな?

 

とはいえ、ペナルティがどうとかって話は置いておいてですね、楽天が第四のキャリアとして進出してきたときに、競争が激化するかって言ったら、ぶっちゃけそうはならないように思うんです。確かに大手三社の料金は高止まりしています。しかし今はMVNOのような格安の通信提供事業者がいるじゃないですか。だからユーザは安いところに移ろうと思えば移れる環境にあるんです。でもMVNOが出てきてそこまで大きな変化はなかったですよね。だから安い回線を提供するキャリアが出てきても、それだけでユーザの乗り換えは発生しないんじゃないでしょうか。

 

楽天は知名度もあるし、カネもあるから、大々的にプロモーションを行ってユーザの乗り換えを促していくでしょう。しかし、大手三社を抑えるために総務省がやってきたあの手この手によって、楽天が乗り換えユーザを集める方法も限られてしまいます。実質0円的な手法を使うことはできないわけです。

 

つーことは、単純に値段で勝負するしかないわけです。しかしMVNOなどの格安事業者は既に存在していて、そこまで顧客を集められていないというのが現実です。それに楽天自身だってMVNOをやっているわけです。MNOになったから一気にユーザが増加する理屈はないんじゃないでしょうか。サービスが始まれば大きなニュースになるから、自然と宣伝になって一定数のユーザは集まると思うんです。でも今まで乗り換えなかったユーザが、楽天MNOに乗り換える動機がそこにあるかというと、たぶん無い。

 

一定数の乗り換えユーザが出てきたことで、仲良し三人組が値下げをしてくれればいいですが、実質的にはMVNO事業をやっていた楽天がMNOになっただけです。劇的に安くなれば競争も激化するでしょうけど、、、どーなんでしょうね。総務省がこれだけガミガミ言うってことは、それだけすごい料金プランがあるということなのか、はたまた・・・

 

 

このあと2020年に本格的に楽天MNOが動き出していくわけですが、今後どうなるのか。料金は安くなるのか。どのくらいまともな回線なのか。事業者間で競争は起こるのか。総務省は怒り続けるのか。じっくり観察していきたいと思います。